そして,うんこと言った。

日本語の美しさの1つに婉曲表現がある。これは,ストレートな表現の代わりに遠回しな言い方をすることによって,聞き手に不快感を与えない優しさである。例えば,「おい鼻毛出てるぞ」の代わりに,「鼻かむ?」とティッシュを差し出してあげたり,「ちんぽ痛い!!」と叫ぶ代わりに,「ちょっと…あそこが…」と言って下品な表現を避けるなど,聞き手に対するオモテナシが感じられる日本語の素晴らしい面だと考えられる。特に,初対面の場合,自分のメンツを保ちつつ,相手に不快感を与えないために婉曲表現を使うのは社会のルールとさえも思っていた。しかし,そのルールが通用しない治外法権ファミリーマートがあったのだ。

 

そのファミリーマート伊勢神宮で有名な三重県伊勢市にあった。私たちはその近くの滝で滝行をするためにはるばる名古屋からやってきたのである。日帰りでも余裕の距離であったが,滝行での成果を上げるために無駄に前日入りした。ただしお金は無かったので2月の寒空の下,テント泊をすることに決めた。しかし,テントを張るスペースはそこら辺にあるわけではないという大変な事実に気が付いた。ダメもとではあったが,地元のスーパのサービスカウンターでお宅の駐車場で泊まっていいかと聞いてみた。マネージャーまで出てきて真剣に悩んでくれたが,やはりだめだった。

 

そこで, Yahoo知恵袋という100%信頼できるソースに頼り,公園で泊まることにした。100%正しいYahoo知恵袋によると,公園の占領は違法に当たるが,一時的な使用は大丈夫ということであった。そこで,我々は「高速でテントを出し入れする会」となり,万が一注意されても,高速でテントを出したりしまったりしているため残像が見えていると主張することにした。とは言うものの違法だったらどうしようと内心ガクガク,外も寒いので物理的にもガクガクしていた。あまり眠れないでいると,空が白んできて朝になっていた。無事朝を迎えられたことに安堵したが,あまりの寒さ(2月である)であったので,お腹の調子が悪くなってしまった。

 

私はトイレを借りるために最寄りのファミリーマートに向かった。そこのファミリーマートにはトイレが3つあり,1つ目は男性用小便ルーム,2つ目は男女共用トイレ,3つ目は女性専用トイレであった。しかし不幸なことに,2つ目の男女共用トイレが故障していたのだ。

 

この時,大きい方がしたかった私に残された選択肢は2つであった。1つ目は小便器で思い切って大便をしてしまうことだ,しかし,小便器で大便をすると流れないかもしれないと私の中の丸尾くんが訴えた。

 

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「ズバリ!ウンチは流れないでしょう!(IQ200の丸尾くん)」

 

大は小を兼ねないのであった。

 

2つ目は女性専用トイレを拝借するということである。1つ目の選択肢がそもそもクソであったので(クソなだけに),事実上この選択肢しかなかった。しかし,無言で使ってしまうと誤解を招くので,一応店員に声をかけてから使わせてもらうことにした。

 

いつものリラックスした調子で自分が言うと,

 

「ぼくねぇ,うんち出ちゃいそうだけどねぇ,女子トイレしか空いてないからねぇ,そこでうんちするねぇ!!」

 

となってしまう。しかし,ここは四季の国,ニッポン。相手に不快感を与えないような言葉選びが求められる。サンドウィッチを棚に並べている男性店員が目に入ったので,彼に声をかけた。

 

 

 

「あの,すみません。トイレを使わせていただきたいんですけど,故障中で…」

 

 

(このセリフから自分がしたいのは小便ではというのを察して「女子トイレ使ってください!」って言ってくれ!)

 

 

 

 

 

 

 

 

「…..え?」

 

 

 

 

(クソ…(クソなだけに(2回目))! 仕方ない….)

 

 

 

 

 

「あの,をしたいんですけど,男女共用トイレが使えないので…」

 

 

 

(恥ずかしいけど,だいぶ詳しく言ったぞ!もう分かっただろう!「女子トイレどうぞ!」って言ってくれ!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…..だい...?」