クリスマスイブに仮面ライダーの映画を見た

高校3年生の12月24日,「仮面ライダー×仮面ライダー ゴースト&ドライブ 超MOVIE大戦ジェネシス」を見に行った。1人で。

 

受験生たるものクリスマスなどに浮かれず,黙々と勉強しておけば良いのだが,年頃の男がずっと家にいると母にいらぬ心配をかけてしまうと思い,家を出ることにした。わざわざ夜7時の回を予約し,夕方5時ごろ「まぁ,ちょっと出かけてくるわ」と言い家を後にした。その時,母は「まぁ!!行ってらっしゃいウフフ」と敢えて詮索をしてこず嬉しそうにしていたが,まさか仮面ライダーの映画を1人で見に行くとは夢にも思っていなかっただろう。親不孝をお許しください。

 

 

24日の名古屋駅は,ささやかではあったがイルミネーションが街を覆い,クリスマスムードに包まれていた。

 

道行くカップルは,腕を組み,クリスマスの素敵な雰囲気に酔っていた。

私は,寒かったので腕を組み,道の端に寄っていた。

 

映画の座席は,人気の「ど真ん中」が良かったが,隣に人がいるとひじ掛けの攻防戦に気を使いそうで嫌だったので,右斜め前の微妙な席を取得した。席に着くと中央どころか部屋の中に誰もいないことに気が付いた。考えてみれば,仮面ライダーのメイン客層である子どもとそのファミリーは,クリスマスの夜に映画を見るよりは家でゆっくりキャラデコクリスマスを食べている方が自然である。大きなお友達も流石にクリスマスイブは怖気づいて外に出られまい。その瞬間,そこは完全にTHE WORLD 俺だけの時間だった。そして,実際映画が始まる時間になっても誰も来なかった。

 

印象的だったのは,広告の時間に係員が人がいるか確認しに来たことだ。想像するに,きっと彼は夜9時までのシフトだったが,7時からの仮面ライダーに人が来なければ早上がりしても良いと言われたのだろう。

 

バイト「7時の仮面ライダーなんて誰が来るかっつーの!あぁ早くミカちゃんと会って俺のクリスマスツリーのライトアップをジングルベルだぜ!一応,チャチャッと確認して早くあが...........ゑ!?!?きしょい男子高校生がおるやん!?!?」

 

実際,確認しにきた係員の顔は本当に驚いていたように見えたし,少し悲しそうな顔をしていた。

 

1人映画は良い経験だったが,映画自体はあまり面白くなかった。その上,係員の早上がりを阻止したかもしれないし,母親も故意に騙した。誰も幸せにならないクリスマスがそこにはあった。