アメリカの避難訓練

「今週の金曜日,避難訓練あるらしいよ」

 

ルームメイトが親切にリマインドをしてくれた。しかし私はその言葉を聞いた瞬間,血の気が引くのを感じた。前回の避難訓練のトラウマが私を襲ったのだ。

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第1の甘え:触れたものを爆弾に変える

 

あれはアメリカに着いて1ヶ月経った9月のことだった。私は図書館で勉強をしていた(えらい!)。5時ごろになり、ノートパソコンの電池があと1時間しか持たないという通知を受けた。そこで、勉強時間の目標として、ノートパソコンの電池が切れるまでは勉強を続けることにした。その瞬間っ!!切れたのはパソコンの電源ではなく,私の集中力だった(ふしぎ!)。5時2分くらいには図書館を出た。この甘えが悲劇を引き起こすとは,この時の私は知る由もなかった....!!!

 

 

 第2の甘え:シアーハートアタック

 

そして、家に向かって帰る途中、今日はジムに行くべき日であることを思い出した。私は3日に1回はジムに行くようにしているのである(えらい!)。しかし、その刹那、私の脳裏に「空腹でトレーニングすると筋力が落ちる!?」という情報が走ったせっかく行って筋肉が落ちるなら行かない方がマシだなという理論で甘えた。まさかこの甘えが今後の大きな悲劇を引き起こすとは.....!!!

 

 

 第3の甘え: バイツァ・ダスト

 

帰宅してすぐに私は夕食作りに取り掛かった。メニューはチーズバーガー(3日目)であった。手早くフライパンに肉を乗せ、ヒーターを10(Max)にオンッ!!効率を求める私はパティを裏返すのを待つ間に洗濯機を回すことにした早くご飯にありつきながら,楽もしたいという甘え。今,すべての条件が揃ってしまった.....!!

 

キラークイーンッッ!!!

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いつものように洗濯機を起動させようとしたところ、いつも聞こえる起動音がならなかった。不審に思い原因を考えたところ、前日この洗濯機で泥まみれの服を洗ったことが思い出された。泥で洗濯機を壊してしまったかと心配したが、一応かすかな水の音がしたのでひとまず良しとした。キッチンに戻りパティを裏返した。バッチリ焦げ目もついていい感じである。この時、時刻は5時30分を指そうとしていた。最速でチーズバーガーにありつける喜びを噛み締め、トースターにパンを投入しようとした。

 

 

 

 

 

 

 

....ピー......ピー.......

 

 

 

 

 

 

かすかな電子音が聞こえた。

 

 

 

 

 

ピー!.....ピー!

 

 

 

 

 

その音は大きくなっているようである。この時,洗濯機がエラーを起こした音だと確信した!くそっ!やはり前日の泥がいけなかったのか....!とりあえず、洗濯を中止しなければ!洗濯機に向かおうとした次の瞬間っ...!!!

 

 

 

ビー!ビービー!!ビービー!!!!

 

 

 

あきらかに、洗濯機のエラー音の音量ではない、荒々しい音が部屋中に響いた。その音はあまりにも大きく、まるで音漏れしているヤンキーの車の中にいるような感覚だった。その大きなは,火災警報器から鳴っているようである。しかし,私は煙を巻き上げるほど豪快なクッキングはしていない。

 

そのあまりの大きさの音に驚いたルームメイトのニックが部屋から飛び出してきた。そして、冷静な面持ちで部屋を見渡し、状況を確認した。そして、「心配ない。これはきっと避難訓練だ。とりあえず、火を切って、外に出よう」と言った。そう,そういえばこの日は避難訓練の日だったのだ。

 

 

彼の冷静な判断と、このけたたましい音の責任は自分ではないという事実は私を安心させた。防災アラームの音の大きさもアメリカンサイズだなぁ(笑)なんて,ふざけたことを思うほど余裕が生まれた。

 

 

そして建物の外にでた。ここから,寮の住人が出てきて、リーダーの注意喚起を受けて部屋に帰るというのが流れであった。しかし、いつまでたっても誰も出てこなかった。これはおかしいとニックも思い、リーダの部屋を訪ねることにした。再び建物に入ると、そこには防災訓練の張り紙があった。そしてそこには、

 

 

 

 

From 5:45 pm

 

 

 

 

 

とあった。ギクリとして、時計を見ると,まだ35分であった。いくら時間に寛容なアメリカとは言え、防災訓練の時間を早めることはないだろう。思えば部屋の中であんなにうるさいアラームがなっていた割には廊下は比較的静かだった。仮に各部屋にあのアラームがなっていたら、とんでもない音量が廊下を包むはずである。

 

そう、このアラームは完全に私が原因だったのだ!!!!

 

 

 

その瞬間,とんでもないことをしてしまったという焦りが生まれた。防災訓練の10分前にマジのアラームを鳴らす。言葉にしてしまえばそれだけなのだが,まだ右も左も分からない当時の私にとっては,何をすれば良いのか分からず,ただ途方に暮れるだけであった。言い訳にならないかもしれないが,進研ゼミ中学講座には「コラショと学ぶ!アメリカで火災警報器をならした時に役立つフレーズ」がなかった。

 

 

幸いにもニックがもろもろの手続きを代わりにしてくれたので何とかなった。しかもその時に「He..(あいつが鳴らした)」と言わずに「We...(僕たちが鳴らしてしまった)」と責任を押し付けずに,一緒に被ってくれのはマジでかっこよかった。惚れたといっても過言ではない。いや,もう愛してる。本当に好きだ....♡。

 

結局,部屋に炎はなかったが,私の心では恋の炎が出火してしまったようである。