1杯の牛丼「

他の人から見たら何てことないものでも,当事者にとってはかけがえのないものということがある。ここに1杯の牛丼がある。あなたはただの牛丼と思うかもしれない。しかし,私にとってこの1杯は決して忘れることができない大切な1杯なのだ。

 

話は2年前に遡る。当時私は,これまで住んでいた実家を飛び出し,一人暮らしを始めることにした。全てのお金を自分で賄う必要があったためなるべく安い部屋を探していた。その時に起きたことは以下の通りである。

 

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さて,無事に部屋も決まり一人暮らしの生活にも慣れてきていたが,やはり金銭面では苦しい思いをした。特に最初の1ヶ月は初期費用や諸々でほとんど全てのお金が無くなってしまったので,必要最低限のものしか買えなかった。また,家電や器具も最低限の物しかなかったので,作れる料理と言えばサッポロラーメンみそ味かサッポロラーメンしお味くらいだった。ライスを食べたかったが,お米も炊飯器もなかったので,白い米粒を夢見ながら黄色い麺をひたすらすすっていた。

 

すると,友人のU君が私の生活状況を心配し,なんと炊飯器をくれたのだ!なぜか炊飯器を2つ持っていたので,1つを私に譲ってくれることになった。彼の優しさに涙がほろり。しかし,炊飯器を貰ったはいいものの,肝心のお米がなかった。そのころ,家賃分の現金を持ち合わせておらず,日払いドカタで現金をもらってたレベルの自分には,お米を買う余裕はなかった。炊飯器を前にサッポロラーメンをすする。嗚呼,なんという悲しみであろう。これはちょうど,ゲームソフト無しで,任天堂DSの本体だけをプレゼントされた子どもと同じ心境である。お米が無ければ炊飯器は意味がないのだ!

 

すると,別の友人K君が私の炊飯器GETニュースを聞きつけ,なんとお米をプレゼントしてくれたのだ!しかも,彼は2駅離れたところに住んでいるのだが,チャリの後ろに米袋を乗せ,はるばるやってきてくれたのだ!その優しに涙がほろり。嬉しくなり,米パーティーを開いた。2人の優しさでふかふかに炊き上がった米は,どんな高級ブランド米にも負けないくらいおいしかった。しかし,欲深き私よ。これまで頑張っても食べられなかったお米を手にした途端,「味がほしいな」とさらなる欲を出してしまった。K君はふりかけもくれたが,それでは心は満たされなかった!これはちょうど,プレゼントされたゲームソフトが「脳を鍛える大人のDSレーニング」だった子どもと同じ心境である。お米が炊けるだけでは意味がないのだ!

 

すると,某牛丼チェーンで働くY先輩が毎日ふりかけ弁当を食べる私を見かね,なんと牛丼の具をプレゼントしてくれたのだ!しかも,いっぱい食べれるようにと,牛肉の海かと思うほどプレゼントしてくれたのだ。その優しさに涙がほろり。U君の炊飯器,K君のお米,そしてY先輩の肉,今,役者は揃った!!そう,ついにDSポケットモンスターをプレイできるようになったのだ!

 

炊きあがったお米に牛肉を乗せると,柔らかい湯気と優しい匂いが満ちた。程よく固く炊き上がったお米に,牛肉のつゆが染み,芸術的なバランスが舌を悦ばせた。生きていることを実感した瞬間だった。咀嚼する度に,深い味わいと人の優しさが染みわたった。人は1人では生きてはいけない脆弱な生き物だ。しかし,いや,だからこそ!助けあって生きていける素晴らしい生き物でもあるのです!!!人間は素晴らしい!!」

 

 

 

面接官「えっと以上が米国留学を希望する理由でよろしいでしょうか

 

 私 「はい!長くなってしまい申し訳ありませんが以上です!」

 

面接官「あ,はいえーつまり,そういった人の優しさや助け合いを海外でも実践するために米国留学を希望する,ということでよろしいでしょうか?」

 

 私 「全然違います!」

 

面接官「え?」

 

 私 「私は今回の件でお米の大切さに気づかされました。だから,お米が大好きになったのです!」

 

面接官「は?」

 

 私 「お米が好きになったので,米国留学したいです!」

 

面接官「え?お米米国あ!もしかして,米国ってお米の国だと思ったの?!」

 

 私 「えっ..? 違うんですか?」

 

面接官「ププププー!!お茶目ですね~アメリカを米国と言うのは,漢字表記の「亜米利加」を略したからなんだよ~」

 

 私 「なっ....!!じゃあ米国にはお米がないんですかっ!?」

 

面接官「そんなことも知らずに生きてきたの~カワイイね~」

 

 私 「ばっ,馬鹿にしないでください////

 

面接官「あら,怒っちゃったのかしら~?ヨチヨチ」

 

 私 「いい加減にしてください!これ以上馬鹿にするならっ…!ひっ!!(股間を握られる)」

 

面接官「んっあきたこまち!」

 

 私 「な,なにを言っているんですか?うっ!(さらに強く握られる)」

 

面接官「あら,お水が少なかったかしら。固く炊けてしまったわ。」

 

 私 「やめてください!これ以上するなら,だれか呼びますよ..

 

面接官「あら,そんなこと口で言っていながらも,あなたのゆめぴりかはゆめぴりかしてるわよ...?ニヤニヤ」

 

 私 「ん…そんなこと!ほぉん..// ほぉん..//

 

面接官「ほら!コシヒカリしちゃいなさい!」

 

 私 「ほおん!// ほおーん!//保温ーーー!!!」

 

面接官「あら,案外早炊きだったのね」

 

と言う経緯でやってきた米国留学も残すところあと少し。面接官が言った通り,アメリカにはあまりお米がなかったので,現在あの思い出の味がとても恋しい。今,目をつむってもあの思い出の味が昨日のことのように思い出される。帰国したら,まっさきにその思い出の味にありつきたいところである。早く食べたいな,サッポロラーメン。