浮気

先日アメリカから帰国した。留学の集大成とも言えるモンスターエナジー(ほぼ)完全レビューはナンセンスダンスさんで書かせていただいた。

 上記のレビューでも書いた通り,大のモンスターエナジー大好きボーイなのだ。好きな物ランキングでいうと,第4位の「ねるねるねるねソーダ味)」に次ぐ,堂々の第5位であるくらい好きだ。ちなみに,第3位は「平和」,第2位は「笑顔」,そして第1位は「ねるねるねるね(ぶどう味)」だ。

 

さて,そのような経緯で一貫して,モンスターエナジー(以下,エナちゃん)を愛し続けてきた。「赤牛」や「現実・金」などには目もくれず,変わらぬ愛を注いできた。イキリ大学生は飲み物をファッションの1つとして取り入れる傾向があり,これ見よがしにエナちゃんを講義中に飲んで,がんばっている自分をアピールしがちである。エナちゃんを利用して,自分の存在を見せびらかしているのだ。許せない。しかも,こういうやつらは近くのコンビニでその時一番安いエナジードリンクを買っていくようなカスである。つまり,「赤牛」がセールで安い日だったら,平気でエナちゃんを裏切って,「赤牛」に寝返るのだ。私はそういった浮気野郎を横目で見ながら,非常に軽蔑していた。そして,誓うのである。「おれは何があってもエナちゃんから離れないから・・・・」と。

 

 

そして,その愛が実り,アメリカではエナちゃんを(ほぼ)コンプリートすることができた。私は,満足感と深い愛を噛みしめ,スーパーマーケットで次に喰らうエナちゃんを探していた。すると,突如,私の眼中に飛び込んできたモノがあった。

 

「reign energy melon」の画像検索結果

その娘は「REIGN(レイン)」ちゃんと言った(以下,レイちゃん)。レイちゃんエナちゃんと違う売り場で私にやさしく微笑みかけてきた。その小悪魔的な笑みは私の薄い心を見通すかのようで,私は首筋に嫌な汗が這っていくのを感じた。何か良くない気配を感じ,足早にその売り場を後にした。

 

そして,エナちゃんの売り場に逃げるこむようにたどり着いた。彼女は変わらぬ優しい笑顔を見せてくれた。いけない,いけない。私は何を考えていたのだろう。私にはエナちゃんと言う愛すべき存在がいるのだ。私は生涯彼女を愛さなければならないのだ。

 

ん・・・?愛さなければ「ならない」?愛が強制的なものになってしまっていないか。愛とはしなければならないものではなく,自然と溢れるもののはずだ。心に反してまで我慢した先に何があると言うのだろうか。

 

 

 

 

 

そう思ってからは早かった。何も言わずエナちゃんの元から走り去った。

 

 

 

 

 

 

 

いくつもの通路を抜け,人混みをすり抜け,一目散に向かった。

 

 

 

 

 

 

そして息も絶え絶えにたどり着いた先には,レイちゃんが静かに座っていた。

 

 

 

 

彼女は初めからこうなることを予想していたかのように,艶めかしい目で笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

気が付くと私はもうレイちゃんの渦の中にいた。彼女はエナちゃんには無い,鮮やかな色みと妖艶な舌触りがあった。斬新なフレーバー,切れのある飲みごたえ。一滴のレイちゃんが私の口内に侵入するだけで,私の脳は開いた。

 

 

もう,後には戻れなかった・・・・・

 

 

f:id:yaitaonigiri:20190521114302j:plain

全6種類

気が付くと私は全てのレイちゃんと関係を持っていた。私が心の底から軽蔑していたクソ大学生と同じ悪行をしてしまったのだ。私はひどい罪悪感に苛まれながらも,彼女の魅力にズルズルとまた引き込まれていった。正直,モンスターエナジーよりもおいしいとさえ思ってしまった。もう,人間として終わりでもいいから,エナちゃんのことは忘れて,レイちゃんと過ごそうと思った。

 

そこで,レイちゃんの親御さんにご挨拶に行くことにした。レイちゃんという魅力的なマスターピースを世に送り出したのはどのような人なのだろうか。私は幾ばくかの緊張とともに,彼女のご実家(ホームページ)に向かった。そして,恐る恐るその大きな門をくぐった。

 

 

 

 

 

エナちゃん「え?DachimiNくん・・?なんで,ここにいるの??」

 

エ,エ,エナちゃん!?!?」

 

なんと,レイちゃんのご実家に向かった先には,エナちゃんがいたのだ。私は,何が起きているのか理解できなかった。慌てて表札を確認すると、

 

Monster Energy Cop

 

!?!? モンスターエナジーコーポレーション!?!?

 

エナちゃん「それになんでレイDachimiNくんと一緒にいるのよ!!」

 

レイちゃん「クスクス。だってお姉ちゃんじゃ満足できてないみたいだったから♡」

 

「お,お,お姉ちゃんだってぇぇえ!?!?」

 

レイちゃん「そう,私REIGNは,お姉ちゃんを創り出したMonster Energy COP から生まれた、次世代のエナジードリンクを目指して作られた新規ブランドなの。まぁ,生まれたところは一緒だけど,経営やブランド展開は違うから,別物と考えてもいいけどね。」

 

エナちゃん「そう,例えるなら,サザエさんの中島や花沢さんはアニメ版しか出てこないキャラだから漫画とアニメは別物って感じね」

 

「なるほど・・・」

 

エナちゃん「でも,酷いわ!私と言う存在がありながら,よりによってレイに手を出すなんて!!」

 

「うっ・・それは・・」

 

エナちゃん「もうあなたは信じられない!!出て行って!!」

 

「ご,ごめん・・・ゆるしてほしい・・」

 

エナちゃん「ごめんって,そんなので許されると思ってるの!?あなたが来ない間どれだけ私が不安だったか分かる??不安で不安で眠れなかったの!!まるで,寝る前にモンスターエナジーを飲みすぎたみたいに眠れなかったわ!」

 

「うっ・・・」

 

エナちゃん「もう顔も見たくない!消えて!!」

 

「・・・わかった・・」

 

 

 

私は踵を返し,元来た道を戻ろうとした。すると,

 

 

 

レイちゃん「それでいいの!?DachimiN君のお姉ちゃんに対する愛はそんなもんなの!?」

 

「・・!」

 

レイちゃん「DachimiN君はうまいうまいと言ってウチを飲んでくれたけど,いつも感想はMonsterのOOO味に似ててうまいだった・・・」

 

エナちゃん「え・・・」

 

レイちゃん「Monster Energyは50種類以上もあるから,どんなシーンでも楽しめるけど,所詮ウチは全6種類だからすぐ飽きられて捨てられる女なの」

 

レイちゃん「あとウチはMonsterEnergyに比べて少し高いよ・・その点,Monster Energyはmlあたりのコスパは他のエナジードリンクの追随を許さない(ヴェノムエナジーを除く)。クソ貧乏ケチ野郎のDachimiN君にはお姉ちゃんがやっぱりお似合いだよ。」

 

レイちゃん,そんなに自分を貶めないで・・」

 

レイちゃん「いいの・・!私は所詮お姉ちゃんの後に生まれた「2番目の女」に過ぎないの。私で遊んで,刹那の快楽を得て,そしてお姉ちゃんに帰っていけばいいのよ。私はきっとそういう役割のために生まれたんだから・・・」

 

エナちゃんレイ・・そんなことは・・・」

 

レイちゃん「お姉ちゃんもこんな終わり方でいいの??お姉ちゃんがDachimiN君に買われるためにいつもおしゃれしたり,新しい自分になろうと努力してるんでしょ!?あ,ちなみに2019の新商品はコレ!」

「monster energy new release」の画像検索結果

 

レイちゃん「いつも努力して,DachimiN君の気を引こうとしているのは妹ながら尊敬しているよ・・・だから,パッと出の若さだけが取り柄の女に負けるわけがないよ・・」

 

エナちゃんレイ・・・」

 

レイちゃんDachimiN君だってそう。アメリカ来たら全部のモンスター集めるんだー!って息巻いて,ルームメイトにウザがられても頑なに缶をすてなかったでしょ?」

 

「はっ・・!」

 

レイちゃん「また,高校2年生の時に,モンスターのシールを集めたら絶対グッズが貰えるキャンペーンがあって,それは先着順だったから,応募開始の12時にお腹痛いと授業を抜け出して,トイレでシリアルコード打ち込んでいた日々を思い出して!」

 

「そんなこともあったな・・・それで,他の参加者も同じこと考えるから,12時にアクセスが集中し,その日はサーバーがパンクして一時中止。後日改めて開催したけど,また先着順だったから,その日もサーバーがパンクして中止。おれは応募完了の直前でエラーが起きたから,応募できたかどうかわからずに,モンスター.JPの対応の悪さに腹が立って,一時モンスターを引退したんだっけ・・・」

 

エナちゃん「そう!いつだってあなたは1回ムキになると,絶対曲げないんだから。あの時は本当に1ヶ月くらい口を聞いてくれなかったよね・・・(笑)でも,なんやかんや応募していたジャケットが届いて,一瞬で許してくれたけどね(笑)」

 

「あーなつかしいな・・・(笑)」

 

エナちゃん「そうだね・・・(笑)」

 

「・・・・・」

 

エナちゃん「・・・・・」

 

「ごめん・・・」

 

エナちゃん「・・・・」

 

「もう絶対エナちゃん以外は見ないから」

 

エナちゃん「・・・・・」

 

「許してほしい・・・」

 

 

エナちゃん「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

エナちゃん「・・・・・次やったら,カフェイン過剰摂取で殺すから(笑)」

 

「・・・!エナちゃん!!」

 

もう言葉はいらなかった。私たちはお互いの存在を確かめるように,強く抱きしめ合った。紆余曲折はあったが,また,大切な存在と人生を分かち合えることになった。もう決して放したくない。

 

大切な存在,絶対に無くしたくないものを改めて気づかせてくれたレイちゃんには感謝しかない。しかし,振り向くともうそこにはREIGN(レインはいなかった。彼女が言っていた,「私は遊ばれるために生まれた存在」という言葉が引っかかる。きっとそんなことはない。REIGN(レインはそのアスリートに特化した独自の路線で道を切り開くだろう。そんな言葉をかけてあげたがったが,もうそこに彼女はいない。彼女は,REIGN(レインは,どんな思いであんな言葉を言い,そして何も言わずに去っていったのか。彼女はもしかしたら初めて会った時からこの結末を知っていたのではないか。あの全てを見透かしたような,艶めかしい笑顔が思い出される。その時ふいにが降り出した。

 

降り注いだ雨により,私はエナちゃんと傘に入った。冷たい雨から離れるように,体を強く寄せ合って。