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16日目(8月9日)
この日は運命の歯車というものを実感した日である。
その日の予定は岩手県花巻市にある宮沢賢治資料館に行った後、わんこそばを食べて、青森市で宿泊。そして、次の日に本州最北端の地である青森県大間市でマグロでも食べて、適当なフェリーを捕まえて北海道に行くことであった。途中までは順調だった。途中まではっ...!
まずは、宮沢賢治資料館に行った。私は宮沢賢治の詩が大好きなのでここは是非訪れてみたい場所だった。彼の生まれ故郷である場所でいかに彼のアイデアが形成されたかに思いを馳せた。
また場内には注文の多い料理店で有名な山猫軒があった。
芸の細かいことに、作中と同じようにクリームや塩などを塗るコーナーまであった
その後、岩手県盛岡市で有名なわんこそばを食べることにした。いけばなんとかなるだろうと思って行ったらめちゃくちゃ並んでいた(この行けばなんとかなるは良くない、という伏線)。1時間ほど待って初わんこそばをキめた。
わんこそばを出してくれるお姉ちゃんは通常1人につき1人のテーブル(4ー5人)担当なのだが、いかんせん一人で行ったために、驚異的なマンツーマンになってしまった。尋常じゃない速度でわんこを入れられ死にそうになったが、なんとか意地を見せて101杯食べた。これは約7人前に相当するらしい。
(100杯を越すと記念札がもらえる)
満腹になり苦しかったが、その日の最終目的地である青森市に向かった。岩手と青森の間は想像以上に険しく、予想以上に疲れた。3時間の運転の後、午後6時頃になんとか着いた。今すぐに寝てしまいたかったが、明日北海道に行く前にバイクのオイル交換をしたかったので、レッドバロン青森店に行った。そこでオイルを交換してもらい、終わったら直ちに寝るつもりだった。
ここで想像以上に時間がかかり、気がつくとほぼ7時だった。今日は精力的に動いたので早く寝たかったが、オイル交換代が想像以上に高かったのが気になった。このままタダでは死ねないという貧乏根性が働き、ついでに洗車をさせて欲しいとゴネた。バイトっぽい新人は戸惑いながらも、ちょっと店長に聞いてきます!と焦って聞きに行ってくれたが、結果はダメだった。じゃあ、せめてホースだけでも貸してくれ、とキショイぐらいゴネたが、やはりダメだった。自分でも何でここまでゴネたが分からない。しかし、このゴネが重要だった。
ゴネ問答がそこそこ長引き、結局ダメだったので諦めて帰ることにした。するとちょうど同じタイミングで店を出たオッチャンと目があった。おっちゃんはどこへ行くの?と強い訛りで聞いてきた。私は、
「(明日)北海道に行くつもりです」と答えた。
「ほー何時の便だ」
「いや、まだチケット取ってないんすよ」
「は?」
「明日大間行って、乗れそうなやつ乗ります」
「そんなことできるわけねーよ」
「え?」
「おめ、チケットなんかねーよ!今電話したって14日のが最速だべさ(その日は9日)」
「え!?!?!マジスカ!?!」
良く考えてみれば、お盆前のこのシーズンはフェリーの需要がとんでもないことになるとは想像に難くない。しかし、私の行けばなんとかなるだろ精神がこの点に蓋をしてしまっていた。今日から5日間も青森でフェリー待ちをしなければならないのは、流石に厳しかった。
「だから俺は行くの諦めたわ。このパンフレットあげっから一応電話して聞いてみなよ」
そういって、おっちゃんはパンフレットを使わなくなったくれた。
私はすぐにその場で電話した。
「すみません、明日大間からフェリー乗るつもりなんですけ..「あ、空いてないすよー」
冷や汗が出た。
「あ、でもたった今キャンセルが出たんで、明日の朝7時なら大丈夫ですよ」
「え、マジすか!」
「はい、でも出港の1時間前の朝6時には来てください」
時計を見ると午後7時を回っていた。そこから、大間までは約3時間なので、今ここで寝て朝3時に出るのはリスキーだった。したがって、今から大間に行ってそこでキャンプする必要があったので、急遽予定を変更して大間に行くことにした。
もし、あそこで洗車でゴネずにサッサッと店を出ていたら、このおっちゃんに会わずにチケットが当分取れなかった。そう思うと、奇跡を感じた。おっちゃんにお礼を言い、すぐに大間に向かった。
しかし、先ほども言った通り、私はすでにめちゃくちゃ疲れていた。極度の疲労感と睡魔の中真っ暗な海沿いを爆速で走った。風が強すぎて横に揺られながらも、早く行かなければという使命感で前だけに向かって進んだ。
風があまりにも強かったのでめちゃくちゃ寒かった。
なんとか、息も絶え絶えに着くところになって、にわか雨が降ってきた。
疲れと寒さの中、意味が分からないくらいずぶ濡れになったが、かえって笑えてきた。
ようやく、テント場についた時にはもう11時だった。6時に着かなければならないということは、5時には起きて準備をしないということだった。
私には6時間下回る睡眠には、無茶苦茶不安を感じる性質があり、一刻も早く寝て6時間程度の睡眠をとらなければと暗闇の中、速攻でテントを張った。
私のテントは土台に、レインカバーをつけるタイプなのだが、暗闇でテントを張ったからだろうか、土台が歪んでいた。いつもはこんなことがないので、原因を考えたが、疲れで全然頭が回らなかった。先ほどにわか雨があったが、今は降ってないし、絶対大丈夫っしょ!絶対もう雨降らないっしょ!と死亡フラグをビンビン立てて、土台が歪んだ状態で寝ることにした。
そう、想像の通り雨が降ったのだ。
しかもそれがただの雨ではなく、雷を伴うとんでもない勢いの雨だったのだ。
(雷の様子)
土台が歪んでいたため、レインカバーが機能しておらず、滝のような雨がテントに降り注いできた。普通なら直ちにテントを設営し直して、レインカバーをしっかりかけるというのが最善の方法なのだが、疲れで意識が朦朧としていた私は神頼みという1番ダメな方法を試みてしまった。
「お願い!晴れて!」って天気の子かい。
当然晴れることはなかった。
ひたすら降り注ぐ雨の中、私は濡れながら、そして寒さに震えながら
寝た。
自分でもびっくりした
よくあんな状況で寝れたな。
朝起きると、髪の毛は雨でグッチョリ、テントの中には水たまりというよりは湖ができていた。あなたは雨の中寝たことがありますか?私はあります。
今回学んだことは、ガチガチに予定に従う必要はないが、最低限は予定を決める(フェリーの予約など)、ことと、行動の後のことを考える(テントを適当に設営したらどうなるだろうなど)
そして、この日ほど屋根の下で寝られることがどれほど素晴らしいかと思ったことはない。屋根、サイコー。
次回