I need YOU

 

 

 

 

 

 

I need YOU... 

 

僕にはあなたが必要なんだ...

 

 

 

 

 

通常なら赤面してしまうようなこのセリフも私なら何回でも言える。

 

あなたが必要なの...!

 

絶対あなたがいるの...!!

 

 

 

 

 

 

 

 

ここでいうあなたとは、特定の存在のことではなく、二人称を形容する場合のあなた、つまりyouという概念だ。

 

通常日本語では、二人称を指す場合に「あなた」とは言わず、省略するか別の名称(名前や役職)で呼ぶ。例えば、What's your name?と尋ねる時は「あなたの名前は何ですか?」というよりは、省略して「お名前は何ですか?」と尋ねたり、敬称がある場合は「先生のお名前は?」といった具合の方が自然であろう。

 

基本的にはこれでうまく行くのだが、you(あなた)と言えないために困る場面がある。それは、二人称が省略できない状況かつ敬称もない場合だ。

 

具体例として、以前働いていた塾の塾長の奥さんがある。

 

 

その塾は塾長(男)とその奥さん、そして息子の家族で経営していた塾だった。呼び方は、塾長は塾長、息子さんは苗字をとって田中(仮)先生で通っていたが、奥さんだけは呼び方がなかった。「奥さーん!」と呼べるわけもなく、いつも「セィヤァァァ!!!」とリンクの上Bみたいな声でお茶を濁すしかなかった。

 

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(リンクの上B)

 

 

 

 

塾長「この書類あいつ(奥さん)に渡しといて」

 

「あ、わかりました」

 

奥さん「あれ?この書類どうしたの?」

 

「あ、塾長に渡しといてと言われました」

 

奥さん「え?誰に?」

 

「えっ....あっ....セィヤァァァ!!!!!!!f:id:yaitaonigiri:20190925122950j:image

 

 

といった具合である。こんな時に「あなたです」と言えればさぞ楽だっただろう。

 

 

もう1つの例として、付き合ってない女の子がある。パーソナルスペースすらも亜空間に吹っ飛ばす虹村億泰みたいなポンポコ男なら、初対面でも「ミカちゃんwww 呑みwwwwいこうよwww」みたいな感じでうまく行くのだろうが、鳳凰のように気高く月下美人のように儚い心を持ち合わせた私にはそのような芸当はとてもできない。すると、必然的に苗字呼びになってしまいそうだが、これは何となく個人的に嫌なのだ。なぜ苗字呼び嫌かだって?嫌なんだよ。こういうのは理屈じゃないんだ。したがってここでも、youと言えないばかりに「セィヤァァァ!!」になってしまうのである。

 

 

 

 

 

 

 

ミカちゃん「私なんて全然ダメだよー(>_<)

 

「い、いや...そんなことないんじゃないかな...?タ、タケシとかマサシも可愛いって言ってたよ..?」

 

ミカちゃん「え?誰を...?

 

 

 

「それはっ...ミッ....!!」

 

 

ミカちゃん「ミ...?

 

 

 

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ドクン!!!

 

 

「セイ...「待て!!!!

 

 

「お、お前は...??!??」

 

 

俺はパラレルワールドのお前だ。

 

 

「はっ...?な、何を言っているんだ...?」

 

 

お前が勇気を出せないまま『ミカちゃん』と下の名前で呼ぶことなく、疎遠になってしまった世界から来た。

 

 

「う、嘘だろ...!?!?」

 

 

俺よ、こここそがターニングポイントだ。ここで勇気を出して、下の名前で呼ぶことで距離を近づけるのだ!!

 

 

 

「し、しかし、こっぱずかしいんだよッ...!こんな時you(あなた)という概念さえあれば楽だったのに...!」

 

 

甘えるなっ!!!!!

 

 

(ビクッ!!!!!)

 

 

いいか、確かに日本語ではyou(あなた)と直接的に言うことは少ない。しかしこれは、話し手は直接言わなくても分かるような文脈作りをして、聞き手はそれを受け取る察知能力を働かすと言う、双方が気を使い合って初めて完成するという日本語の美しさの結晶ではないのかね?

 

 

 

「はっ...!」

 

 

 

その美しさには目も向けず、やれ『アメリカではー』だの『北欧ではー』とかすぐに白人文化を引き合いにだすな!絶対こういう時、モンゴル民族とかマヤ民族とかの話出さないだろ??要は、本質的な文化差の批判をしたいわけではなく、白人が好きなだけなんだろ?

 

 

「ひっ...!」

 

 

いいか、俺は別に白人至上主義社会を批判して、大日本帝国バンザーイとか言いにこのパラレルワールドに来たわけでない。ただ、普段直接的に名指しをしない日本語文化だからこそ、直接名前を呼ぶ時には特別に輝くという喜びを思い出して欲しいのだ。

 

 

「た、たしかにそうだっ..!!」

 

 

さぁ、何も恐れることはない!今こそ不確かなyouの壁を越すのだ!」

 

 

「っ....!!」

 

 

 

 

 

ミカちゃん「ねぇ?さっきからどうしたの??大丈夫?

 

 

「....ちゃん」

 

 

 

ミカちゃん「え...?

 

 

 

「ミカちゃん...だよ。」

 

 

 

ミカちゃん「は?急にキモ

 

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