【連載】禁煙日記 1日目

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ないっ・・!ないっ・・!!

二日酔いでズキズキ痛む頭を掻きむしりながら,卓上に散乱する荷物を押しのける。一区間だけ乗ったタクシーのお釣り550円,充電ケーブル,ラッキーストライク・・・昨日の飲み会で使用したものが散乱しているが,探している"アレ"が全然見つからない・・・そう,職場からパクったzippoライターだ。

 

倉庫の奥底に眠っていたそのライターを見つけた時,クリスマスの朝のようなワクワクした高揚感に包まれた。重厚なデザイン,シャープな音,一瞬で心を持ってかれた。

ライターを見つけたことを職場のジジイ達に報告すると,皆嬉しそうな顔で「昔はこれで女の心にも火を点けてやったモノよ」という感じでカッチョイイ~テクニックを披露してくれた。そのテクニックに憧れ,私もマメができるほど練習をした。

 

そんなライターが今,目の前にないのだ。

 

焦りと緊張が体内に響く。気持ちを落ち着けるためにも,目覚めの一服をすることにした。久しぶりに100円ライターを取り出し,ラッキーストライクの箱を覗くと最後の一本だった。ライターを無くし,ちょうど最後の一本。その時,ふとある考えが頭の中に浮かんだ。

 

この一本で禁煙をしよう・・・

 

世は空前の禁煙ブームである。喫煙できるスペースは街から消え,10月からは更なる増税。煙草を吸うと言えば,前科者かのように白い目で見られる。こんなカスの数え役満のような嗜好品を続けるメリットなどない。冷静に考えたら,タバコは吸わないべきだ。

 

今回の事件は,神様からの啓示なのかもしれない。一応,探すだけ探して,もし見つからなかったら絶対にタバコをやめようと誓った。

 

ライター探索にあたり,昨日の出来事を改めて思い出した。飲み会から電車で帰り,最寄り駅の喫煙所でタバコを吸った記憶はあるので,確実に駅の喫煙所から自宅の間には存在するということが確認された。そこで,特別な訓練を受けた隊員と共に,昨日歩いた道を辿り,ライターを探すことにした。

(特別な訓練を受けた隊員)

 


さて,隊員と共に,目を灰皿のようにして探索をしたが,IKKOに見つからない(どんだけ~)。むしろ,地面を見ていて気が付いたのは吸い殻の多さだ。こういった喫煙者のマナーの悪さによって喫煙者は煙たがれるのだ。しかし,私はもう喫煙者ではない。ついに忌まわしき習慣から解脱できたのた。でもね,一応最後まで探そう。一応ね。

照つける太陽の下でフラフラしながら,自分とタバコの思い出について思い出していた。一番最初にたばこを購入したのは小学校低学年のころだった。はじめてのおつかいとして,「きゃすたーまいるど下さい」とコンビニにまで行った記憶がある。当時は今よりもおおらかな時代だったとはいえ,未成年のガキには売れないと言われた。どうしてよいか分からず途方に暮れていると,「私は販売できないけど,自販機でなら買えるよ」(当時はタスポがなかった)と手をとり,おもての自販機まで連れて行ってくれた。そして,にぎりしめた500円玉を渡すと代わりにきゃすたーまいるどを買ってくれたのだ。

この一件により,握られたレジのお姉さんのあたたかな手とタバコが脳内で結合し,タバコを見る度に健やかな気持ちになるようになってしまったのだ(決してニコチンによる作用ではない)

 

 

さて,そのようなことを思い出しながら歩いていると駅の喫煙所に来てしまった。隊員の懸命の活躍も虚しく,何の成果も得られなかった。

(隊員の懸命の活躍)

 

家に帰ると疲れた隊員が窓辺で寝ていた。

 


そういえば,隊員はいつもここで寝ているなと思った。その瞬間,昨日の出来事が一気に思い出された。

 

駅の喫煙所でタバコを吸い・・・

 

とぼとぼ歩いて家まで行き・・・

 

まっすぐ自分の部屋に向かっ・・・たのではなく!!!

 

まずは,窓辺で寝ている隊員にプロレス技をしかけてた!!

 

このことを思い出し,昨日隊員が寝ていたクッションの下を思いっきりめくりあげた・・・!!!!すると・・!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

う~ん残念。また明日!!!