テレビのジョンの実力

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はじめに

ピタゴラスイッチ」というNHKの番組をご存知だろうか。何気ない日常に隠れている不思議な構造や面白い考え方を紹介することで、いろいろな事象や仕掛けを通して「考え方」を育成する、というテーマの番組(Wikipediaより)であり、全国の子どもに絶大な人気を誇る教育番組である。

 

番組内には様々なコーナーがあるが、その1つに人形劇がある。2匹のペンギンが謎を発見し、その謎を百科事典をモチーフにした老害が「それは私の0721ページにある」と自身の内部(つまり裸の部分である)を露出させて興奮しながら説明するのだが、ペンギン達が「子どもだから、読めませーんww」と一蹴するお決まりの流れがある。そこで、視覚的情報として説明するために登場するのがテレビのジョンである。

 

「ワンワン、お呼びですかぁ〜?」と間抜けな声をしながらテレビを模した犬ころが登場し、自身の顔面に謎を解明する映像を投射し、謎が解明して一件落着という寸法である。

 

ジョン、クビ

さて、そんな伝統ある人形劇にも、時代の流れが押し寄せているようだ。というのも、テレビのジョン、つまりテレビというデバイスからタブレットに変わったのである。

さんず on Twitter: "テレビのジョンからタブレットンになってて衝撃を受けた https://t.co/MIahJrbGCi" /  Twitter

そこでテレビのジョンの代わりに登場したのが「タブレットン」。

 

犬をモチーフとしたテレビのジョンから、豚をモチーフとしたタブレットに変わった。私はこの事実をTwitterで知ったのだが、見た瞬間、得体のしれない恐ろしさに身を包まれた。それは、単に時代の急激な変化が自身のノスタルジックな思い出に影響を及ぼした寂しさといった類ではない。それは、タブレットンの名前である。

 

タブレット」×「豚(トン)」ということで、タブレットン。そんなことはいちいち説明するまでもないが、それは大人にとっての話である。前任のテレビのジョン、これが問題である。「テレビ」×「犬(犬の名前でありそうなジョン)」でテレビのジョン、幼少期の自分はそう思っていた。しかし、様々な知識を体得した現在ならわかるが、「Television(テレビジョン)」からとって「テレビのジョン」であろう。これに気が付かなかったのは自分だけという可能性もなくはないが、少なくとも自分にとっては、「テレビのジョン」という表層的な一単語として捉えていた。え、逆にみんなは違うの?「(4歳のガキ)あ〜wwテレビジョンだけにテレビのジョンってか?wwNHK、さっぶいわ〜ww」っていう目線で見てた?違うよね?

 

とにかく、この恐ろしさは真の思惑が知らないうちに地雷のように私の思考に埋め込まれていたという事実である。気が付かなかったものが、時を経て爆発する。

 

ちょっと違う例かもしれないが、「シーフード」というのも自分にとってはそうだった。幼少期はよくわからないまま、エビとかカニとか海から来るものを「シーフード」と呼ぶんだと捉えていたが、英語を勉強し始めて「SEA(海)」+「FOOD(食べ物)」という要素で構成されると知り、これまで一単語として埋め込まれていた「シーフード」が爆発したのである。

 

現在、俯瞰して考えると、幼少期の自分は思考の第一層の部分で情報を取得、認識していたとわかる。つまり、「テレビのジョン」も「シーフード」も単語そのままとして捉え、使っていたが、知識を習得することで、それぞれが別の意味であったりプロセスがあったと気がつくのである。しかし、そういってわかった気になっている現在でも実は埋め込まれていた爆弾に気がつけていない可能性は十分にある。

 

これもまた違った例になってしまうかもしれないが、あるラップのに次のようなものがある。

 

いちいち位置につき 斬新な語録
悩む程に究極な句で落とす
気付く奴は気付く10連コンボ
役者が揃えば はい!九連宝燈

(Booyaka!!(feat.餓鬼レンジャー)より)

 

ラップなので、[語録(oou):落とす(oou)][10連コンボ(uue(n)o(n)o)九蓮宝燈(uue(n)ouo)]と韻を踏んでいるのはきっと誰にもわかりやすいところだろう。

しかし、このバースの恐ろしいところは「気付く奴は気付く10連コンボ」という部分である。つまり、

 

いち(1)いち位置に(2)つき 斬新(3、4)な語録(5、6)
悩む(7、8)程に究極(9)な句で落とす(10)
気付く奴は気付く10連コンボ
役者が揃えば はい!九連宝燈

 

このように、一見聞いただけではわからない数字が埋め込まれていたのである。また、九蓮宝燈も麻雀を知らない人にとっては、単なる10連コンボと韻を踏むための単語にしか見えないかもしれないが、九蓮宝燈とは(①麻雀の中でも非常に難易度が高い役(レア過ぎて上がったら死ぬと言われている)、②数牌の1と9を3枚ずつと2〜8を1枚ずつと1〜9で雀頭をつくる)の大きく2つの意味がある。

①に関してはこのラップが複数人のラッパーというメンツで作られているものなので、最高なメンツがそれって奇跡的なラップができたという定性的な意味。また、②に関しては、麻雀という14個の牌をそろえるゲームにおいて(1112345678999+1〜9のどれか)という数字を集めるというテクニカルな意味なのだが、もう一度見てみると、

 

いち(1)いち(1)位置(1)(2)つき 斬新(3、4)な語録(5、6)
悩む(7、8)程に究(9)極な句(9)で落とす
気付く(9)奴は気付く(9)10連コンボ
役者が揃えば はい!九連宝燈

 

でてくる数字を並べると(11123456789999)と九蓮宝燈の役を構成する数字になっているのである。

 

このように、

「単なるラップ→韻を見つける→数字のしかけに気がつく→九蓮宝燈のトリプルミーニングに気がつく」

 

と知識があるほど、より深い層まで潜っていけるのである。そして、まだ気がつけていない地雷が潜んでいる可能性も大いにあるのだ。このように、見聞きする情報を一元的なものとして処理してしまうのはなく、背景や意図を汲み取れるようになれば世界はもっと面白いものとして映るかもしれない。文字だけではわからいときはアイツを呼ぼう。

 

ぷぁぱぱ♪ぷぁぱぱ・ぱ♪でーれ!でーれ!!

 

「わんわん!お呼びぃですかぁ↑〜」

 

 

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