ゲイとビッチとウェイと

飛び交うドル札、艶かしく光るネオンライト、そして骨に響くようなアップビートミュージック。その空間の中で私が体験したのは、夢か現か。

 

 

アメリカでの話だ。私はひょんなことから黒縁眼鏡のウェイ系(以下ウェイ)と仲良くなった。彼は,威勢が良いだけのウザウェイとは違い,異性が大好きな憎めないやつだった。彼はアメリカに来たての私にアメリカのバー文化を教えてくれることになった。私は初めてのアメリカバーデビューでワクワクしていた。そこで,彼は2人友達を連れてくるとのことだった。

 

まず出てきたのは,バビル2世のポセイドンみたいな巨大な男だった(以下ポセイドン)

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バビル2世のポセイドン



 

彼はあまり口数が多い方ではなかったが,ウェイとは昔からの友達のようであった。

 

次に,胸を覆ってる面積よりも覆ってない面積の方が多いセクシーガールが来た。(以下エロ娘)

 

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参考画像

エロ娘は身長こそ小さめだったが,自分の女としての魅力を知り尽くしている様で,しぐさ,表情,体の動き...いたるところに注意を払い,フェロモンをまき散らしているようだった。

 

ウェイ「あのエロ娘...可愛いだろう?」

 

私「Yeah...」

 

ウェイ「でも,あいつはボーイフレンドがいるんだぜ!チクショウ!!」

 

それでもエロ娘とウェイもまた良き友人のようであった。

 

ウェイ,ポセイドン,エロ娘,そして私。個性豊かなメンバーでバーへ向かった。

 

 

 

行き着いたバーにはビリヤード台があったので,みんなでビリヤードをやることにした。エロ娘は「私そんなにやったことないからわかんな~い」とウェイに教えを乞うていた。ウェイは鼻の下をトムとジェリーばりに伸ばして,文字通り手取り足取り教えていた。まったくけしからん。彼氏がいる身でありながら,その肉体の美を用いて男をたぶらかせるとは。たしかに,胸部にそびえ立つ清らかな2つの丘陵には魅力があるかもしれない。柔らかくもシャープな白い肌で覆われた,東京ドーム3個分。その滑らかな曲線美は人類の長い歴史と英知が織りなす無限のらせん構造。そのなだらかな丘陵を雪崩のように滑り落ち,大天使ミカエルが宿る無限の谷間。その深さはマリアナ海溝より深く,太平洋よりも広い。森羅万象すべからくここから産まれて,ここに帰っていく。その母なる...「DachimiN君も教えて~

 

 

手取り足取りした。

 

 

ビリヤードに飽きた我々は2件目に行くことになった。そこでウェイがやっぱストリップバーっしょ!とはしゃいだ。素,酢,巣ストリップだって~!?ビチボンピュアボーイの私にとってそのアダルトな響きは強力だった。しかし,何事も経験が大切である。私はいやらしい気持ちを一切持つことなく,おっぱい,後学のために行くことにした。

 

 

アメリカのストリップバーは店によってシステムが異なるらしいのだが,今回行った店は,女性が躍るメインステージと,いくつかのテーブルとソファーがあるだけのシンプルなつくりであった。中は薄暗く,仄かな紫のネオンライトが照らしていた。入場料はかからず,目当ての女の子がメインステージで踊っている時に1,2ドルのチップを置くと何かが起きるとのことだった。

 

 

我々はひとまず適当なテーブルについて,遠巻きにステージを観察した。どうやら,店内に流れる曲(1曲あたり4,5分)ごとに踊る女性が変わるようだった。暗い店内で,激しい曲と共に上裸の女性が躍っている様は,非現実のようで,めちゃサイコー,行き過ぎた大量消費志向の波が女性という対象にまで及んでしまったことに憤りを感じた。

 

すると,曲がおわり,新たな女性が登壇した。その女性はとても興味深かった。是非,チップを払って,(社会見学のために)サービスを受けたいと思ったが,手元に現金がなかった。すると,エロ娘がおもむろにハンドバッグから1ドル札の束を取り出し,「行ってきなワラ」とドルの束を渡してくれた。なんという漢気。私はありがたくそのお金を受け取り,(社会問題解決の糸口をつかむために)真顔でメインステージに座った。そして,チップを払うと...続きは君の目で確かめてくれ!

 

 

エロ娘からもらったお小遣いとウェイが休むことなく運んでくるお酒によって,無料で楽しみまくっている自分がいた。良い娘がいればステージに走っていき,インターバルにはビールを飲んでエナジーチャージ。私がステージに走っていく度にエロ娘もウェイもポセイドンもみんな笑っていた。私も笑っていた。

 

あるインターバルで何の気なしに「どの娘が一番タイプ?」とポセイドンに聞いた。すると,「いや,俺はゲイだから」と海より山派かな?くらいのテンションでサラッと言われた。そしてかくいう私も,そうかゲイだったかのと,末っ子だと思ってた人が一人っ子だった時くらいのテンションでサラッと聞けた。

 

なんだかその瞬間が一番居心地が良かった気がする。

 

ゲイをサラッとカミングアウトするポセイドンと,そんなこと気にせずエロ娘に肩を回しながらも一線を越えないウェイ,そして,純粋に男友達と楽しむために遊びに来ているエロ娘。それぞれが自由に振る舞いながら,それでいて最低限の尊敬は欠かないような関係に思えた。人間関係とは本来このようにあるべきなのではないかと思った。

 

しかし実際には,自分の本当の気持ちを抑えて偽りの姿を演じきったり,社会的立場や関係によって別の関係を制限したり,人に合わせるために無理やりやりたくないことをやったりすることの方が多い気がする。タップ1つでフレンドになれる現代社会において,どれほど自分の本当の気持ちを表現できたり,誰かに見せるためでなく自分のためにやりたいことが出来るだろうか。

 

そんなことを,ストリップバーでおっぱいに包まれながら思っふぁ。