天丼
突然だが、私は何者かに洗脳されているかもしれない。いや、絶対そうだ。特定のアクションを起こすとそれが奴らへの合図となり、私は忽ち記憶を消されてしまう。
そのアクションとは天丼を食べることである。
私は天丼を食べると、記憶を消されてしまう現象に悩まされている。そして同じ過ちを繰り返してしまうのだ。
だいたい2ヶ月に1度くらいの頻度で無性に天丼が食べたくなる。というのも私は無類のエビ好きなので、そのエビが載った天丼は好きになるに決まっている。エビが載った天丼のことを考えると気分がアガる(揚げ物なだけに)。
さて、そのような経緯で前日久し振りに天丼が食べることにした。天丼を注文し、思いっきり食べるために袖を捲り上げて(揚げ物なだけに)ワクワクして待つこと数分。アツアツ出来立ての天丼が運ばれてきた。
その瞬間私の消されてた記憶が蘇った。
「あ、俺天丼そんなに好きじゃなかったわ」
なぜ私はこの事実を忘れていたのだろう。まず第一に天丼はエビ以外の食材の天ぷらの割合の方が多い。その中に、ナス、ピーマン、カボチャと私の嫌いな食べ物ランキング上位3位を占める天ぷらがラインナップしているのだ。自分で頼んだのに残すのは忍びないので、それらの不人気野菜天ぷらを他の人にあげてしまうと(揚げ物なだけに)、残されたのはエビ天とアスパラ天と甘いタレだけだ。
また、私は元来お米自体がそれほど好きではないので、米をピンで食べるということができない。したがって残されたわずかな天ぷらと甘いタレで米をかきこむことになるのだが、オカズが圧倒的に足りないのでなかなか食べるペースは上がらない(揚げ物なだけに)。
そうなると、微かに甘いタレが染み込んだ米を半泣きで食べるしかない。時折、もう残してしまいたいと思うが、おばあちゃんが「食べ物を残すような奴はいつまでたっても、うだつが上がらないよ。揚げ物なだけにね。」と言っていたので、泣きながら頑張って食べる。そして自分自身にこう言いきかせるのである。
「俺は天丼がそんなに好きではないから、もう頼まないようにしよう」と。
しかし、そんな私の願いも虚しく、天丼を食べ終わった瞬間に秘密組織に拉致され、記憶を抹消されてしまうのだ。そして2ヶ月後くらいにまた天丼が食べたくなるようなプログラムをインストールされ、また同じ過ちを繰り返すのだ。
私はこれ以上同じことを繰り返したくはない。食べ物にも失礼だし、なによりタレかけご飯を食べるのが純粋にしんどい。秘密結社の諸君、お前がこれを見たのを俺は見たぞ。はやくこの洗脳を解いてくれ。私の怒りのボルテージは上がって(揚げ物なだけに)今にも爆発しそうだぞ!絶対に許さん!!!!!!
ふう、何だが怒ったらお腹がすいてきたな。何かガッツリしたものでも食べたいな。
たまには天丼でも食うか