韓国お姉さんと少年

はじめに

「タイムマシンが発明されませんように」。大分むぎ焼酎二階堂のcmで有名なキャッチコピーだ。過去の果たされない思いやほろ苦さをそのまま受け止めようとする姿勢を端的に表した素晴らしいセンスだと思う。この言葉を理解し噛みしめられる人は,過去に執着せず,ワビサビの神髄に近づける人であろう。しかし,未練がましい私は声を大にして言う。頼むからっ・・・!もう1度あの時に戻してくれっ・・・!

 

韓国お姉さん

あれは小学校2年生くらいの頃だったと思う。当時住んでいたマンションの下に韓国人のお姉さんと日本人の旦那さんが越してきた。度々,遊びに行かせてもらい韓国料理を振る舞ってもらったものだった。かなり昔の事なので,正直,顔も名前も覚えていないのだが,当時,近所の公園と学校くらいしか知らない少年にとっては,その異国から来た美人は,神秘的で煌びやかに見えた。また,その人には妹もいて,その人もまた美人だった思い出がある。

 

ある時,いつものように私達家族と韓国姉妹で食事をした。その時に,妹は韓国に帰らなけらばならず,今日で会えるのは最後だと伝えられた。これで会えるのも最後かと思うと少し悲しかった。食事会も終わりに近づき,いよいよ別れの時がやってきた。

 

別れの挨拶をしていると,妹が私にだけ別れのキッスを要求してきたのだった。今でこそゲロスケベカスの瞳をしていると揶揄されるが,当時はママ友界隈で絶大な支持を誇ったプリプリキュートボーイだった。そんなプリプリボーイがキスを要求されるのは,世の常,自然の理だったかもしれない。しかし,当時シャイでピュアだったプリプリキュートボーイの私は,その大人の行為を前に,戸惑いと恥じらいで何をしていいか分からなくなってしまった。

 

見かねた妹は,私を彼女の部屋へ連れていき2人きりの状況を作ってくれた。きっと家族の前では恥ずかしいと思って気を使ってくれたのだろう。勿論,それも要因の1つではあったが,それ以上にアダルトな雰囲気に頭が追い付かなかったのである。さらに,生活感にあふれる部屋で彼女の下着が目に入りますますパニックになってしまった。まるで,耳たぶが(for you) 燃えている(for you)ようだった。

 

結局,彼女があらゆる手を尽くしてくれたにもかかわらず,キスをすることはできなかった。そのまま妹は韓国にかえて帰ってしまい,お姉さんからは後日,怖い思いをさせてごめんねと謝られた。もちろん怖い思いではなかったが,当時の乏しい言葉では何と表現して良いか分からず,恥ずかしいとも申し訳ないとも言えない悶々とした感情が心を覆っていた。

 

しかし,義務教育を修了し,さらに大学に通っている今ならハッキリと言葉にして言える。あれは,紛れもない「ご褒美」だったと。当時の私は,据え膳の上に飛び乗り,土足でタップダンスをして,ドライブスルーでマックを買って帰るという暴挙をしてしまったのだ。今すぐ,タイムマシンに飛び乗り,少年の私に事の重要性を説きたい。将来,自分の地域では,コリアン系は最安でも60分9000円するということも。

 

こりあゃ~もったいないことしたな...。